「私はやる前からわかってた」のは気のせい
最近リーズナブルな価格帯のイタリア料理のファミレス「サイゼリヤ」が、299円, 399円などの商品価格を1円アップしてみたら思わぬ効果があったという話がありました。
実際サイゼリヤだけではなく、3980円とか、ほぼ4000円、消費税を加えたら4000円を超えてしまう現実を心理的に緩和するような価格設定がされていることが多いですね。
「ああ、この価格設定(~99円とか)はそういう心理効果を狙ってやっているんだな。今やどこでも見るやつだからずるく感じたりもしないほど一般化してる、よくあるやつだ。で、わかってはいるんだけどそれでも効果はあるんだよなー。実際自分もその狙いにはまってるし。」
なんて思うのではないでしょうか。
サイゼリヤもその慣例に倣っていたのですが、金銭のやり取りが1円単位になってしまうので、それを簡略化するために1円値上して299→300、399→400みたいにきりのいい数字にしたそうです。
サイゼリヤはそもそも価格をできるだけ低くするために、支払いは現金しか受け付けていませんでした。
(クレジットカードだと手数料を3%とかカード会社に支払わないといけないので利益率が大幅に下がる)
そのうえで半端な金額を取り扱えば必ず1円玉や5円玉レベルのやり取りが多く発生します。
1円値上げは、このコロナ禍で従業員と客の接触(コインの受け渡し)を減らす目的があったそうです。
一部では値上げを残念がる声がありました。
たしかに、局所的にみると299→300だと心理的に違うのかもしれません。
また値上げなんて経営難か?今後の大きな方針転換の予兆か?なんて心配する人もいたようです。
が、この改変が実行されてしばらくたった現在驚くべき効果がありました。
結果、少なくとも3つの点で改善があったそうです。
この先を読む前に考えてみてください。
事前に聞いていた、サイゼリヤが期待している効果は下記の1のみでした。
(内部ではもっと先まで考えていたかもしれませんが対外的には)
もしかしたら2ぐらいまでは想定済みだったかもしれません。
しかし少なくとも私にはこれを聞くまで想像できませんでした。
もちろん当事者じゃないので思考の深掘りに真剣みが足りないという点はありますが、もし真剣に考えたとしても3までは思いつくかどうか・・・
先に答えを知ってしまった今となってはわかりません。
では、下記答えです。
3つの効果
- 会計にかかる総時間が30%減少した。
- レジで割り勘せずグループでまとめてくれることが多くなった。個別会計は25%減少した。
- 客単価が上がった。
リンクの記事による詳細はこちら
会計にかかる総時間も30%減少し、自分が食べた分の金額が500円、600円などとキリのいい金額なので、レジに来る前にグループでまとめてくれることも多くなった。
価格改定で個別会計は25%減少したという。
さらに面白いことに客単価が上がったという。
客単価は700円台前半だったが、50円や100円刻みの値段設定にしたことで、ちょうど合計1000円を目安に注文する顧客が増えたという。
きっとサイゼリヤ自身も3の効果までは想定していなかったのではないかと思います。
思わぬ、そしてかなりうれしい副作用があったわけです。
客観的なデータをもって出た結論を見た今、1,2,3も深く納得したのではないでしょうか?
でも、見るまではわからなかった。
この時点で「オレは予想できてたよ」と後出しで心理的にそのような気になっているかもしれません。
でも多分それは気のせいです。実際には知る前に知ることはとてもとても難しいのです。
サイゼリヤの方たちは1、ないし2までは想定していて、それを期待したからこそ、反対意見や懸念を押しのけて(天秤にかけて)実験に踏み込んだのだと思います。
これができる人はすごいと思います。
自分の行動の作用を予想して、強い意志で行動に移す。
我々もこのようになりたいですね。
他にも
- 1円アップしても消費者は離れないと思えたのはすでにサイゼリヤに対する非常にポジティブなブランドイメージがあったことを忘れてはいけない。
- 行動を起こしその効果測定をするためにきちんとデータを取っておいた。もしかしたら目標値も掲げていたかもしれない。
- 我々はこのような事例から学び、自分のことに対してより一層予想力とそれを信じて行動しる力を磨くことができる。
といったことがとても大事だと思います。
あともう一点。この値上げは従業員やお客さんのことを大事に考えているからこその発想だったという点。
尊敬します。
こちらもお楽しみください
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