こっくりさんのカラクリ
こっくりさんを知っていますか?
エンジェルさんなど違う名前で呼ばれている場合もあるようです。
アメリカにもウィジャボードといって似たような遊びがあります。
こっくりさんは「こっくりさん」という霊と交信する降霊術だと考えられています。
3人の指先を添えた十円玉が文字を書いた紙の上で滑るように自然に動くことで霊からのメッセージを受け取ります。
「降霊」術と呼ばれているだけあって、始めにこっくりさんに「降りてきて」もらいます。
その後、口頭で様々な質問をしてこっくりさんに文字盤上で答えを教えてもらい、最後に「帰って」もらいます。
なぜ十円玉が勝手に動くのでしょうか?
言うまでもありません。
誰かが動かしているんです。
意識的な場合だけでなく無意識的な場合もあると思います。
無意識に動かしているということは、参加者全員に意識的に動かしている認識がないため、すごい!コワイ!となります。
心霊というオカルトをベースにした催眠術のようなものです。
場の臨場感のベースが心霊になり、参加者全員が自ら作り出した空気に飲み込まれていきます。
自分たちが理解できない不思議な現象はすべて心霊の仕業として理解の穴を埋めていきます。
始めの質問はウォーミングアップ的な軽いものから始まりがちです。
「こっくりさん、(参加者女子中学生A,B,Cのうち)Cのことを好きな男子はだれ?」
参加者のだれかが「(同じクラスの)さとうくん」だと推測している、もしくは期待しているとします。
そして意識的、もしくは無意識的に(さとうの「さ」)に指を誘導します。
動かした本人を含む参加者は十円玉が勝手に動いたことに驚き、ここで霊の存在を認識します。
つぎに「と」、そして「う」。
最後の「う」までくると、参加者全員がすでに「う」がくると予測しているので、3人の無意識的な運動が揃ってきます。
もし、1人が始めは盛り上げようとして意識的に動かしていたとしても、続けていくうちに他の参加者も(意識的・無意識的に)動かし始めるので、次第に空気にのまれていきます。意識的に動かしていたはずなのに見えない力に動かされているように感じてくる・・・嘘が嘘でなくなっていきます。そうやって霊の存在を認識するといよいよこっくりさんという霊が降りてきたという信憑性が増してきます(臨場感の高まり)。
ひどいときには恐怖の重圧による異常行動などが誘発されます。
こっくりさんが帰ってくれず、参加者にとりつくなどという妄想が真実味を帯びてきます。
心霊現象だと思っているので、その場を解散してもこの恐怖は参加者を支配し続けることもあります。
ここまで読んで「なぜ無意識的に指が動くの?」と思う方もいるかもしれません。
>そして意識的、もしくは無意識的に(さとうの「さ」)に指を誘導します。
この部分です。
これは催眠術の文脈においては観念運動、または類似の現象(不覚筋動など)で説明できます。
イメージしたことに対しカラダ(無意識・潜在意識)が反応してしまう現象です。
心霊なんて絡まなくてもこういった現象は普通にあります。
ですので、催眠術師の視点からは、こっくりさんは心霊現象ではないと考えています。
ついでに、心霊ではないことを確かめるにはこうすればいいのではないか、と言うことを提案して終りとします。
十円玉に指などおかず、十円玉がひとりでに動くかどうか確かめてみればいいと思います。
たぶん動きません。
それによって人間の力が必要だということが推測できます。
「こっくりさんは人にとりついて、人を動かすのだ」
という反論に対しては、
指を置く3人の参加者は日本語ができない人にし、質問は4人目の日本語ができる人にお願いしてみればよいと思います。
たぶん動きません。もしくは答えが意味をなさないと思います。
動かす参加者の中に、日本語の質問を理解し、日本語の返答を構成するというリソースがないからです。
日本語ができない人の代わりに全員が目隠し&耳栓をするということでも似たような現象を観察できると思います。
催眠術師である私は、こっくりさんのカラクリはすべて心理的な現象で説明できると信じています。
しかし、だからと言ってこっくりさんが安全とは言えません。
事実としては純粋な心理的な現象だとしても、参加者が心霊現象だと信じる強い思い込みの果てに極度の恐怖に陥れば精神的ダメージを受けかねません。
こっくりさんは不思議で面白い、怪しいという魅力がありますが、ベースが心霊と言うオカルトこともあって、精神的ダメージを受けるリスクがあるのであまり気軽にやらないほうがいいですね。